2020年7月23日(木・祝) ~ 2020年9月27日(日)
1937年7月19日、ドイツ南部のミュンヘンで「退廃芸術展」という展覧会が開幕します。ナチスの芸術政策を象徴する展覧会でした。モダンアートをナチスの純血主義的芸術観に反するものとして徹底的に排斥する意図の下に作家と作品が選ばれ、その中にはヴァシリー・カンディンスキー、パウル・クレー、リオネル・ファイニンガー、オスカー・シュレンマー、ゲルハルト・マルクス、ヨハネス・イッテン、ラースロー・モホイ=ナジ、ヘルベルト・バイヤーなどバウハウス関係者も多数含まれました。
「退廃芸術展」の展示室内では各作品の購入額が示され所蔵する国公立美術館の見識を批判・糾弾するとともに、モダン・アートは無意味・無価値であるというイメージを来場者に与えるべく雑然と作品が並べられました。3か月で200万人以上が来場し、ナチスの文化統制が浸透する一方、「退廃芸術」の担い手とみなされたモダニズムの芸術家たちには、ドイツ国外へ逃げるか、国内で制作活動を休止して密かに暮らすことを強いられる芸術の危機の時代が訪れました。
本展では広島県立美術館のコレクションから、ナチスによって活動が禁じられた芸術家として、上述のバウハウスの芸術家たち、エーリッヒ・ヘッケル、マックス・エルンスト、マックス・ベックマン、ジョージ・グロッス、アレクサンダー・カーノルト、パブロ・ピカソ等の作品が展示されます。
たとえば、展示作品のひとつにクレーの作品《内なる光に照らされた聖女》(「新西欧版画集」第1集・バウハウス・マイスター篇5)があります(掲載画像)。この作品は「退廃芸術展」の展覧会パンフレットに掲載されそのイメージが忌まわしきものとして論じられています。 また、ノルダウ『退廃論』や、バウハウス校長グロピウスの建築論が掲載された情報誌『Uhu』、モホイ=ナジがしばしば表紙を担当した先進的なグラフ雑誌『die neue linie』など時代を映す資料類もともに展示し、この悪夢のような状況と対峙した作家たちの活動の一端が提示されます。
「退廃芸術展」は1933年バウハウス閉校後のナチスとバウハウスの関係を示す重要な出来事であり、本展はバウハウス設立100年の歴史の重要な局面を照らし出します。
▼展覧会概要
展覧会名: 夏の所蔵作品展 サマーミュージアム 戦後75年特集「退廃芸術展-危機の時代の画家たち」
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会期: 2020年7月23日(木・祝) ~ 2020年9月27日(日)
開館時間:9:00~17:00
※9/6までの金曜日は20:00まで開館・9/7からの金曜日は19:00まで開館
※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 ※8月10日(月)、9月21日(月)は開館
入館料 一般510円(410円)/大学生310円(250円)
縮景園共通券:一般610円/大学生350円
※特別展は別料金、ただし7月23日~8月23日に開催される「日常の光-写し出された広島」は所蔵展入館券でご覧いただけます。
※( )内は20名以上の団体
※障害者手帳をお持ちの方や65才以上の方、県内の大学に在学する留学生の方などは無料。
※当館で開催中の特別展入館券にて無料でご覧いただけます。
会場:広島県立美術館 2階第1展示室
〒730‐0014 広島県広島市中区上幟町2‐22 TEL:082‐221‐6246
主催 広島県立美術館
画像: パウル・クレー《内なる光に照らされた聖女》1921年、リトグラフ、紙 広島県立美術館所蔵